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アイエヌスタジオ 一級建築士事務所
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 二俣川の家 

 House in Futamatagawa 

 


 横浜駅から谷筋を走る相鉄本線で10分の場所である二俣川は、地名の由来である二俣川、相鉄線、保土ヶ谷バイパスの交差する地域で、横浜郊外に典型的な丘陵地である。本住宅のある駅西地区は1950年代に東急電鉄により二俣川ニュータウンとして住宅地開発が行われ、2010年台には駅東地区で住商施設の再開発が行われた。駅から敷地へ向かう道のりは1kmで、約30mの高低差を上がる。途中で坂道を振り返ると、住宅群と木々がマッピングされた谷地形を一望できる。

  敷地はこの丘陵地のおよそ頂上に位置する。あたり一帯は第一種低層住居専用地域であり、北側のGL+5mから始まる厳しい高度斜線制限がある。そのため大きな建物は無く、大体同じスケールの戸建住宅が地形に沿って整列している。住宅地のパタンは短冊形の土地が背割り状に反復する形で、ほぼ全ての土地が一方が接道し、残り三方が隣家に面する。ただし、土地に傾斜があるせいで、道路の向かいの隣家は低いレベルに低い軒高で建っていて、敷地は道路から半階ほど上がっている。道路からは比較的プライバシーを確保しやすく、敷地から空がよく見えるし、2階レベルからは丘陵住宅地を一望できる。息の詰まるような反復複製の背割り住宅地に、地形と斜線制限が風穴を開けているような気がした。

 建物の予算は1950万円。建物規模は土地の制約と家族の生活様式を鑑みて22坪とした。この坪単価からすると、在来木造の総二階建てを基本形として、コストパフォーマンスの良いいくつかの変形を加えるのが適当な道筋だと思われた。コストの余裕は無いので、加える変形は切実な理由に基づくものでなければならない。

 1階は開放性をもち土地の制約を感じないピロティのような空間とするため、間隔をあけて反復する背の高い壁柱にスラブが載った形とした。壁柱の間はフルハイトの開口で、全方位からの採光・玄関の出入り・庭への出入り・通風に使う。南東向きのファサード側からの採光はもとより、側面からも隣家との間から光が差し、建物の奥までが明るくなった。天井高さを大きくするとともに、室内外を一体的にするために床高さは150mmと低く抑え(ただし設備配管はRC柱スラブ上を展開している)、庭の平板敷を屋内まで引き込んで植物や三輪車を置く場所とした。木張りとした天井はファサードを貫通して屋外に突き出ている。

 高く持ち上げられて眺めの良くなった2階では、スラブの上に斜線制限をかすめる屋根を架けた。小屋組みのトラスと木柱でスラブを吊り上げることで、床梁せい210mm・床厚246mmと薄く納め、1階の天井高さの確保に努めた。ファサードは既設の擁壁と階段をかわすために斜行している。ファサードの外に突き出た2階スラブは玄関の庇とテラスとなる。角度の触れた窓は二俣川の谷の方を向くことになり、2階からの視界の開けを良くしている。

  距離をとった1階と2階の中間レベルには1.5階の床をつくり、吹き抜けにある踊り場のような勉強室と、建物の奥に水回りのコアを設けた。勉強室は1階から2階を意識させる場所であり、2階寝室から出てきた勉強机や書斎の機能でもある。キッチンはコの字形で天井高1957mmと機能的かつコンパクトにまとめ、リビングと庭へ視界が開ける形とした。トイレはダイニングへ音が抜けないよう、ダクト・壁・扉の仕様に配慮した防音室仕様である。

 土地の制約を利点を読み解き、一般的な住宅のコストの中で住宅を計画したところ、見慣れたようでいて少し見慣れない外観や、住宅では見慣れない垂直性の内部空間や、庭や丘陵住宅地を望む水平の世界の広がりを得ることとなった。本住宅の敷地はありふれた反復する土地であるが、少しでも場所と住空間の固有性を発掘できたのではないか。

設計 IN STUDIO(小笹泉、奥村直子)
監理 IN STUDIO(小笹泉、奥村直子)
構造設計監理 Studio Stem(中島幹雄)
施工 縁建設
所在地 神奈川県横浜市旭区
建築面積 39.74m2
延床面積 72.27m2
階数 地上2階
構造 在来木造
設計期間 2017.1-2018.10
施工期間 2018.11-2019.6
写真 吉田誠(5枚目を除く全て)、小笹泉(5枚目のみ)





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